ビジネスマンのためのお粥 『MBA 100の基本』

ビジネスにおける重要事項を項目ごとにまとめた書籍。専門書独特の難しさ、分かりにくさはなくとても読みやすい。きっと中高生でも充分に読める。それくらいに噛み砕いて説明してくれている。

またその人が欲している領域の知識だけをインプットすることもできる親切さもある。

特に印象に残ったのはKeep It Simple,Stupidと大聖堂の話、オレンジの実か皮かの問題の3つ。どれも視点を変えられたものだ。気になった方は読んでみてほしい。


寓話や経営者の箴言を皮切りに説明が始められている章も多い。ビジネスだけでなく、生き方や人としてのあり方などのベースにしていきたい。

MBA100の基本

MBA100の基本

2時間では学べない戦略通史『戦略の教室』

古代から現代の、戦争からビジネスの局面で用いられた戦略の歴史。

文字通り戦争に勝つための戦略から資本主義におけるマネジメントやマーケティング戦略まで。

学者や経営者の理論だけでなく、ケースやどんな用いられ方をされるかまで網羅。

1つの戦略ごとに割かれるページは短いけれど入門としてはちょうどいい。ここを起点として勉強を深めていくための地図的な役割になりそう。

入門かと思いきや、終盤になるに従って読みづらさが増し、最後の方は理解が追いつかなかったのが悔やまれるところ。

古代から現代まで2時間で学ぶ 戦略の教室---生き抜くための勝利の全法則

古代から現代まで2時間で学ぶ 戦略の教室---生き抜くための勝利の全法則

書簡形式で紡ぐ二人の時間 『回転ドアは、順番に』

2人の詩人が、互いに詩を送り合い相手の詩に呼応するように次の詩を書いていくという斬新な作品。


少なくとも私はこのタイプの本に初めて出会った。 男女2人の出会いから別れまでを、全て詩で表現。それにより、全て間接的な表現での描写を強いられる。だからこその良さがある。


絵を描く時、普通なら対象の物の輪郭をペンでなぞる。しかし、本作は物の外側の景色を書き込むことで物を浮き上がらせるような? そんな感覚。うまく説明できないけれど、うまく説明しなくていいのだとも思う。

回転ドアは、順番に (ちくま文庫)

回転ドアは、順番に (ちくま文庫)

仕事のための“本の地図” 『ビジネスマンのための「読書力」養成講座』

順序立てた読書法に加え、本の地図的な役割も果たしてくれる書籍。本ごとに読み方を変えて臨むというのは無意識にやっていたことだが、改めて伝えられると今後意識しようと思わせられる。 印象に残った部分として、成功と失敗どちらに学ぶのかという問題についての一節がある。これまで私が読んできたビジネス書では、成功は特異なケースが多いが失敗は似通っているという考えがほとんど。しかし、本書では「失敗にはいろいろなパターンがあるが、成功はワンパターン」「失敗の反対は別の失敗」。ここでのアンナカレーニナの引用は痺れた。

生の哲学者によるメッセージ「超訳 ニーチェの言葉」

2010年発行、ミリオンセラー突破の哲学書

いい意味でニーチェへの印象が180度変えられた書籍。彼のメッセージを10のジャンルに分けて紹介している。

「疑え、俯瞰しろ」というメッセージが根幹にある。ニヒリズムの要素があり、それを前向きに生きるメッセージで肯定したことでニヒリズムを否定する「生の哲学」に行き着いた? という解釈かは私自身哲学に明るくないので判然としない。
しかし、ニヒリズムと検索すると真っ先にニーチェの名前が登る。世間的には誤認されているのかもしれない。

内容として、既知のこと、当然のことが多くはあるけれど、読み終わった時不思議と力が抜け4分の3くらいの力で頑張ろうと思えた。

また賢人ニーチェの言葉を超訳という形で用いているからこそ、自己啓発本にありがちな胡散臭さはそれほど感じなかった。

超訳 ニーチェの言葉

超訳 ニーチェの言葉

最高にカッコ悪くて、最高にカッコいい 『ナナメの夕暮れ』

好きな人ほど、会ったときに思いの丈を伝えられない。
好きなものほど、その度合いを表現しきれない。


どこかで誰かがこんな感じのことを言っていました。
まさにそれです。


今回取り上げるのは、文藝春秋から2018年発行、オードリー若林正恭著のエッセイ
ナナメの夕暮れ』です。


オードリーのオールナイトニッポンを聞き続け、
十周年記念ツアーにも青森と武道館の2公演参加した“リトルトゥース”な私にとって
この本は買って真っ先に読むべき本だったのですが、もったいないような気がして本棚にしまっておくうちにここまで来てしまいました。



特に強く刺さった所を三つ紹介します。あえて絞りました。

理想の自分にずっと苦しめられてきた。凡才のくせに、センスのある自分、お笑いファンに一目置かれる自分になりたいと夢見ていた

 これほどの人が理想と現実との差異にそこまでもがき苦しんでいる。私は純粋に驚き、少し怖くなりました。
前作、『社会人大学人見知り学部卒業見込み』では(厳密には『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』ですがこっちは旅行記なので別扱い)若き若林さんの苦悩や葛藤がストレートに描かれていました。そこから考えると幾分、殺気のようなものは薄れた印象。

自己啓発本なんか、当然何の役にも立たない。あそこに書いてあるのは人生の茶帯が黒帯になる方法だ。

 自己啓発本についても度々言及しています。成功者がたまたま自分自身にあったルートを探り当てただけだと。確かにと思う反面、私自身日々の推進力として、一流の人から学ぶため自己啓発書に近いビジネス書は読みがちなので心苦しいところ。

 でも今作で、若林さんと私自身とを隔てるラインがはっきりと見えたのです。まだ私の中には「諦め」への抵抗があり、若林さんを「諦め」にたどり着かせた圧倒的な自己否定や「ナナメ」な視点はなかった。『社会人大学人見知り学部卒業見込み』では共感して、頷けるポイントばかり。若林さんが隣にいるかのように感じました。


 けれど『ナナメの夕暮れ』の読後感は「共感」ではなく「決別」に近い。もちろん、これまでもこれからも私はオードリーが大好きです。しかし、若林さんは自分自身の代弁者ではなくて、全く別人だった。それは寂しくもあり、安堵感もありました。



そして三つ目

客の笑い声のデシベル数も脳波の興奮も目の瞳孔の開き具合も求めていなかった。自分と相方の目の瞳孔の開き具合だけを求めていたのである。それは“どうしてもやりたい漫才”である


ナナメの夕暮れ

ナナメの夕暮れ

動と静の経営者 『憂鬱でなければ仕事でない』

幻冬社 見城徹サイバーエージェント 藤田晋

2人の仕事への向き合い方とは?

激励されるようなメッセージから心が苦しくなるような言葉まで並ぶ



熱狂の見城徹と静の藤田晋
性格は違っても、経営者として数々の荒波を乗り越えてきたエネルギーが伝わってくる。

全てをとは言わなくても、参考にしたいところ。

そのために、この2人を超えるつもりで行かなければなりません。

それ相応の苦難が伴うだろうし、考えると憂鬱になる。

しかし、歩みを止めてはいけない。生きている限り、進まなくてはいけない。

そう、見城徹は言います。

憂鬱さを伴うのが仕事ですが、それを乗り越えた先に光を見ることができる。

私には想像もつかないほどの努力を重ねてきた2人の経験と言葉はとても眩く感じます。